何曜日だっていざよいちゃん

世界は生きづらく、そして美しい。

恐るべき、彩の国(埼玉のゲテモノ飲料を飲んだ話)

私は千葉生まれ千葉育ちなのですが、大学時代はなぜかそれだけで『翔んで埼玉』のごとく迫害を受けました。
埼玉から通学している人も多かったため、卒業祝いのプレゼントで埼玉県民からこんなものをいただきました。


まずはこいつ、コバトンです。
埼玉県の県の鳥であるシラコバトをモチーフにした、埼玉県のマスコットなのだそうです。
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君さあ、イラストと顔違わん?

人なつこそうな笑顔はどこへやら、虚無に満ちた瞳に吸い込まれそうな印象で、素直に「かわいいやつだなー、ようこそ我が家へ!」などと言えないオーラを放っています。
それなりにかわいがってやろうと、一緒に『翔んで埼玉』を観に行きましたが。
プレゼントはこれだけではありません。コバトンは序章にすぎないのです。卒業生への餞とは思えないインパクトの代物が、袋の底(なぜかNEWDAYSのコンビニ袋だったと記憶しています)には眠っていたのです。

「いや、なんで今になって三月にもらったプレゼントの話してるの?」とお思いでしょう。
私はそれらにびっくりしたあまり、実家の冷蔵庫にキャプテン・アメリカのごとく眠らせていたのですが(そう、飲食物なのです)、先日九月三十日にやってきてしまったのです。
賞味期限。
ただでさえ恐ろしい味がしそうなのに、味の保証が切れてしまう……私はついに決意したのです、
飲まねば。



ここからはありがちな清涼飲料水のレポになります↓


①ほうじ茶サイダー

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二本あるうち、私が先に手にしたのはこちら。だってほうじ茶スイーツって今流行ってるし、コーラと同じような色してる安心感があるし(私はこのとき大変に、コーラが茶色であることに感謝しました。なんでもないようなことが、幸せなんだと思います)、わりといけるんじゃないか、と。
まず蓋を開け、香りを確認。うん、ほうじ茶の香り。これは普通のほうじ茶スイーツに違いない。確信した私はほんの少し、口に含みました。
やはりほうじ茶の香りは強く、豊潤に口に広がります。嗅覚とは鼻以外にも備わっているのだと、そのとき思いました。味も普通のサイダーです。しかし……サイダーの味の中にあるほうじ茶は、上品な和は感じられず「えっなにこれ、土?」としか思えない。まずくはない。だけど香りが土(と化してしまったほうじ茶)。

「サイダーはたたらばで、そなた(ほうじ茶)は森で生きよう」

と、打ち合わせでもしたかのように方向性が別れています。

来世もし嗅覚をお母さんのお腹に置いて生まれてきたら、もう一度飲んでみようと思うドリンクでした。

狭山茶コーラ

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これは本当に、ギリギリになるまで飲めませんでした。
これは茶の色じゃん。ていうか青汁に近いじゃん。青い汁じゃん。「メロンソーダと同じ色!」なんて無理でしょう。「着色料不使用」が不安要素になるケースなんて、ほかにあるでしょうか。きれいに染めていてほしかった。

蓋を開けます。炭酸の「プシュッ」という音すらも私を不安にさせます。
そして広がる香り……青臭い。
狭山茶って飲んだことないんだけど、もしかして青汁なんじゃないかな?
引き返したい気持ちが山々なのですが、ここまで来たからにはと口に含みます。

草。

青臭い、なんてものではない。口に広がる大草原。ああ、『翔んで埼玉』の通り、埼玉県民は本当にそのへんの草を食べているんだわ……。

いや、違う。大草原のなかで、私を呼ぶ小さな声が聞こえる。


「……シテ……コロシテ………」

き、君は………コーラ!!


狭山茶というキメラに取り込まれながら、自我を失うまいと足掻くコーラ。そう、さっきも君が茶色いことに感謝していたんだよ。幼い頃からそばにいてくれた、我が愛しのコーラ、君は何故に………。


ああ、なぜ神は(というか埼玉県民は)こんなにも残酷なことをするのでしょう。
しかし先人(なんのだよって話だけど)ナンシー関はこう言っていました。
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「ジュースに飲まれるな、ジュースを飲め!」

ナンシー関によると、飲みやすいジュースは軟弱。飲み込めないほどのジュースだけが、ホネのあるジュースなのだそうです。
伝統ある狭山名物とみんな大好きコーラをキメラにしてしまう、誰も喜ぶはずもない発想こそが、ホネのあるジュースなのです。
全てを許してしまうおおらかさ、ユーモア……ホネのあるジュースは、世界平和の象徴とも言えるのではないでしょうか。


ところで「最後の単行本」と書かれた本に掲載されているのが、ジュースのコラムって……最高じゃないですか?
さくらももこもそうでしたが、「えっこれが遺作?」と思わせるほどに最後まで作柄たっぷりな作家、憧れてしまいますよね。


狭山茶コーラは、来世人間の心を持たず草がおいしいと感じる埼玉県民に生まれたら、また飲んでみようと思います。
みなさんの周りにもきっと、ホネのあるジュースはいるはずです。