何曜日だっていざよいちゃん

世界は生きづらく、そして美しい。

私は部長が推しだったよ

 ボーイズラブ(通称BL)とは、男性同士の恋愛を描いた創作のジャンルである。ちなみに「男だから好きになったのではなく、この人だから好きになった」という、性別に関わらず互いを愛するストーリーが必須条件となるため、実際の同性愛者をターゲットとした作品とは区別される。だから読者も、これが本当の同性愛の形だとは考えていない人が多い。
 二〇一八年四月から六月まで、テレビ朝日系列で放送されたドラマ「おっさんずラブ」が大ブレイクした。この作品はBLをテーマとして取り扱っていて、モテない三三歳のサラリーマンが同性である会社の上司と後輩、そして幼馴染の女性からも思われているなかで最終的に誰を選ぶのか、という展開に注目が集まった。オフィスという環境、少女マンガのような純愛がテーマだったことも、BL作品に触れてこなかった視聴者にも受け入れられた理由だと思われる。この作品のヒットもあって、同性愛やLGBTをテーマにした作品は今後も世に出てくるかもしれない。しかしその試みが、LGBTに対する間違ったイメージを植えつけることにならないか、とも考えてしまう。
「感動ポルノ」という言葉がある。これは二〇一二年にオーストラリアの障害者人権活動家ステラ・ジェーン・ヤングが用いた言葉で、身体の障害に関わらず前向きに生きる人たちを見た健常者が「感動をもらった」と言うような場面を指す。ドキュメントなどのメディアで取り上げられる場合にも使われる言葉で、日本でも近年テレビで取り上げられている。問題なのは「どうしてメディアは障害者=障害にも関わらず前向きに頑張っている、というイメージを植えつけるのか」という、「感動ポルノ」にされてしまう側の意見である。
「障害ではなく、才能で評価されたい」「人を特別にするのは障害ではなく、障害に関する自分の知識に 疑いを持つこと」とステラは言っていた。鑑賞されてしまう立場の人々は、ただ普通に生活をしているだけなのに、そこに感動を求める人たちがいる。本当にその人たちの物語が読みたいのなら、その認識を捨てる必要があると思う。きっと私たちと一緒で、創作にできるような経験をした人なんてほんの少しで、なんの変哲もない日々を送っているのではないだろうか。
 人は自分と違うものに惹かれるもので、だからこそこうしたテーマが創作につかわれるのだと思う。しかし創作物とはいえ、それが世間的にあまり知られていないような人たちのイメージを勝手に植えつけてしまうのも事実である。だからこそ作品をつくる側の人は注意を払い、きちんとテーマにされる側の人のことを理解する必要があることも、考えなくてはいけない。さらに真実とは異なる創作を、誰もがフィクションとして捉えられるような世界になってほしい。

https://www.ted.com/talks/stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much/transcript?language=ja
↑ステラさんのスピーチ、ここから聞けます~